肌の水分蒸発:経表皮水分蒸散量
コスメが上手くなりたい
先生、「経表皮水分蒸散量(TEWL)」って、簡単に言うとどういう意味ですか?
コスメ研究家
簡単に言うと、皮膚から知らないうちに出ていく水分の量のことだよ。肌のうるおいを保つバリア機能を測る目安になるんだ。TEWLが高いと、バリア機能が弱くなっている可能性があるね。
コスメが上手くなりたい
なるほど。じゃあ、TEWLが高いとどうなるんですか?
コスメ研究家
肌が乾燥しやすくなったり、肌荒れを起こしやすくなるんだ。だから、TEWLを適切に保つことが、健康な肌を維持するために大切なんだよ。
経表皮水分蒸散量とは。
お肌から知らないうちに出ていく水分の量のことを『経表皮水分蒸散量』と言います。これは、肌の一番外側にある角層という部分を通して出ていく水分で、TEWLと略されることもあります。汗とは別物で、g/㎡/時という単位で測ります。体温が上がったり、運動したり、精神的な刺激を受けたりすると、汗とは別に、この水分は出ていきます。健康な肌でも、少量ですが、常に水分は出ています。この水分の量は、肌のバリア機能を調べる目安になります。例えば、肌が荒れると、この水分の量は増えます。これは、肌荒れによってバリア機能が弱まっていることを示しています。他にも、バリア機能が弱い病気では、この水分の量はかなり増えます。この水分の量の測り方には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、肌の表面の水分量の差から計算する方法です。筒状の器具を肌に当て、中の二つのセンサーで水分量を測り、計算します。もう一つは、肌に密閉した器具を当てて測る方法です。乾燥した空気や窒素ガスを器具の中で循環させて、その中に含まれる水分量から計算する方法と、器具の中の水分量の増え方から計算する方法があります。ただし、汗をかいているときは、正確に測ることができません。また、特に最初の方法では、わずかな空気の流れにも影響を受けてしまうため、汗をかかない温度や湿度、風の条件で測ることが大切です。測る前に、肌を空気にさらして少しの間、安静にしておくことも重要です。さらに、この水分の量は体の状態にも影響されやすいため、測るたびに数値が変わります。そのため、しばらく測り続けて、数値の変化が落ち着いてから記録することが大切です。健康な人の場合、この水分の量は、人種、年齢、性別によって違います。また、同じ人でも体の場所によって違い、お腹、背中、太もも、腕では、おおよそ5g/㎡/時ですが、頬では約10g/㎡/時です。顔の肌は水分量が多いのに対し、手足は乾燥しやすく、水分量が少ないという特徴があります。このように、健康な肌では、水分の量は、肌の水分量と比例する傾向があります。一方、肌荒れしている肌では、水分の量が多く、肌の水分量は少ないという特徴があります。このように、測定環境に左右されやすい指標であるため、肌荒れの原因や予防、化粧品による効果を調べたい場合は、左右どちらかの肌を基準として、変化を比べるのが良いでしょう。健康な肌でも、角層をテープで剥がしていくと、バリア機能が弱くなって水分の量が増え、水分を多く含んだ角層が現れます。その後、水分の量を測り続けると、通常は剥がした直後から減り始め、数時間で剥がす前の値に戻ります。この現象をバリア回復と呼び、肌にはバリア機能を回復させる力があると言えます。バリア回復の指標として、テープで剥がす前、剥がした直後、一定時間後の三つの値から計算されるバリア回復率が使われます。例えば、精神的なストレスを受けるとバリア回復力は弱まり、特定の香りを嗅ぐとバリア回復力は高まるという報告があります。
水分蒸散とは
私たちは生きていく上で、常に皮膚から水分を放出しています。まるで植物の葉から水分が蒸発するように、皮膚からも絶えず水分が空気中に逃げていくのです。この現象を「経表皮水分蒸散」と呼び、よく「TEWL」と略されます。これは、暑い時や運動をした時にかく汗とは全く別のものです。汗は体内の水分調節を目的としていますが、経表皮水分蒸散は皮膚の表面から常に起こっている現象です。
この経表皮水分蒸散は、肌の健康状態を知る上で非常に重要な役割を果たします。肌の一番外側には、まるで壁のように肌を守ってくれる「角質層」と呼ばれる層があります。この角質層は、水分を保ち、外部からの刺激を防ぐ、いわば肌のバリアのような働きをしています。このバリア機能が正常に働いている肌では、水分が過剰に蒸散するのを防いでくれます。逆に、肌が乾燥していたり、炎症を起こしていたりすると、角質層のバリア機能が低下し、水分がどんどん蒸発してしまいます。このため、経表皮水分蒸散の値を測ることで、肌のバリア機能がどれくらい正常に働いているかを客観的に判断することができるのです。
経表皮水分蒸散の値は、肌の状態を数値で表すことができるため、様々な場面で活用されています。例えば、化粧品の開発現場では、新しい化粧品が肌にどのような影響を与えるかを調べるために、経表皮水分蒸散の値が測定されます。また、皮膚科などでも、肌の乾燥具合や治療の効果を判断するために、この値が参考にされます。健康な肌を保つためには、この経表皮水分蒸散の値を低く保つことが大切です。そのためには、日頃から肌にうるちを与え、バリア機能を正常に保つための適切なスキンケアを心がける必要があるのです。
項目 | 説明 |
---|---|
経表皮水分蒸散(TEWL) | 皮膚から常に起こる水分の蒸発。汗とは異なる。 |
角質層 | 肌の一番外側の層。水分保持と外部刺激防御のバリア機能を持つ。 |
TEWLと肌状態の関係 | TEWL値が高い → バリア機能低下 → 肌乾燥、炎症 TEWL値が低い → バリア機能正常 → 健康な肌 |
TEWLの活用例 | 化粧品開発、皮膚科での診断など |
健康な肌を保つには | 適切なスキンケアでTEWL値を低く保つ |
測定方法の種類
肌から出ていく目に見えない水分の量を測る方法は、大きく分けて二種類あります。一つは「開放系」と呼ばれる方法、もう一つは「閉鎖系」と呼ばれる方法です。
開放系では、肌の表面に二つの測定点を設けます。そして、この二点間でどれくらい水分の量が違うのかを調べます。この水分量の差を基に、フィックの法則と呼ばれる計算式を使って、肌から出ていく水分の量を算出します。フィックの法則は、物質の移動量はその物質の濃度差に比例するという法則です。肌の表面の二点間の水分量の差が大きいほど、肌から出ていく水分の量も多いと判断できます。
一方、閉鎖系では、肌の表面に小さな密閉された器具を当てます。この器具の中は空気が入っていて、肌から出ていく水分がこの空気中に溜まります。一定時間後に、この器具の中の空気の水分量がどれだけ増えたかを測定することで、肌から出ていく水分の量を算出します。
どちらの方法も、周りの環境に影響されやすいという特徴があります。例えば、気温が高いと肌から出ていく水分の量も多くなりますし、湿度が高いと空気中に水分が多く含まれているため、肌から出ていく水分の量は少なくなります。また、風が吹いていると、肌の表面から水分が蒸発しやすくなります。そのため、正確に肌から出ていく水分の量を測るには、気温、湿度、風の影響を受けない、一定の環境を作る必要があります。例えば、測定を行う部屋の温度と湿度を一定に保ったり、風を防ぐために仕切りを設けたりするなどの工夫が必要です。
測定方法 | 原理 | 計算方法 | 環境の影響 |
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開放系 | 肌表面の2点間の水分量の差を測定 | フィックの法則(物質の移動量はその物質の濃度差に比例) | 気温、湿度、風の影響を受けやすい |
閉鎖系 | 肌表面に密閉器具を当て、器具内の空気の水分量の変化を測定 | 器具内の空気の水分量の増加量 | 気温、湿度、風の影響を受けやすい |
測定時の注意点
肌から出ていく水分の量を測る検査は、ちょっとしたことで結果が変わってしまうので、注意が必要です。特に、汗の影響を受けやすいため、検査を行う部屋の温度は22度以下に保ち、湿度や風の状態も一定にするのが理想です。エアコンなどで温度や湿度を調節し、窓を閉めて風が当たらないようにするなど、出来るだけ落ち着いた環境を用意しましょう。
検査する部分を服などで覆わず、外気に触れさせておくことも大切です。しかし、すぐに測り始めるのではなく、皮膚の温度が落ち着くまで少し時間を置きましょう。皮膚の温度が安定しないうちに測ると、正しい結果が得られない可能性があります。
肌から出ていく水分の量は常に変化しています。そのため、一度測って終わりではなく、しばらくの間、変化の様子を観察する必要があります。水分の量の変化の幅が小さくなり、安定してきたら、その値を測定結果として記録しましょう。焦らずにじっくりと時間をかけることで、より正確な結果を得ることができます。
これらの注意点を守らないと、測定結果に汗などの影響が出てしまい、肌の状態を正しく評価できない可能性があります。正確な測定結果を得るためには、環境を整え、落ち着いて測定を行うことが重要です。丁寧に検査を行うことで、肌の状態を正しく把握し、適切なケアにつなげることができます。
測定結果を正しく得るための注意点 | 具体的な方法 |
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検査環境を整える |
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皮膚の状態を安定させる |
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測定方法 |
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測定値の解釈
肌の水分蒸散量をはかる指標である経表皮水分喪失(TEWL)の測定値は、様々な要因によって変化します。人種や年齢、性別によって生まれつき持っている肌の性質が異なり、その結果として測定値にも違いが現れます。また、同じ人であっても体の部位によって値が変わることもよくあります。
一般的に、顔のTEWL値は腹部や背中の値よりも高くなります。これは、顔の皮膚が体の中でも薄く、外部からの刺激を受けやすい構造になっているためです。反対に、腕や脚の皮膚は厚く、外部からの刺激から体を守るためのバリア機能がしっかりとしているため、TEWL値は低くなる傾向があります。
さらに、年齢によってもTEWL値は変化します。生まれたばかりの赤ちゃんの肌は非常に薄く、水分を保つ力が弱いため、TEWL値は高くなります。成長するにつれて皮膚のバリア機能は発達し、TEWL値は徐々に低下していきます。しかし、高齢になると再び皮膚の水分保持能力が低下し、TEWL値は上昇する傾向があります。
このように、TEWL値は様々な要因が複雑に絡み合って変化するため、測定結果を解釈する際にはこれらの要素を総合的に考慮することが重要です。例えば、ある製品の効果を測定する際には、被験者の年齢や肌質などを揃える必要があります。また、測定部位や測定時の環境(温度や湿度など)も一定にすることで、より正確な結果を得ることが可能になります。単に数値だけを見るのではなく、測定値に影響を与える可能性のある様々な要素を理解した上で、結果を正しく判断することが大切です。
要因 | TEWLへの影響 |
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人種、年齢、性別 | 生まれつきの肌質の違いによりTEWL値が異なる |
体の部位 | 顔 > 腹部・背中 > 腕・脚 |
年齢 | 乳幼児期:高い 成長期:徐々に低下 高齢期:上昇 |
その他 | 測定時の環境(温度、湿度など) |
肌荒れとの関係性
肌荒れは、肌の見た目だけでなく、肌内部の水分バランスにも大きな影響を与えます。肌が荒れると、経表皮水分蒸散量(TEWL)という指標の値が上昇することが知られています。これは、肌から蒸発する水分の量が増えていることを意味します。同時に、肌内部に蓄えられている水分の量は減少します。これらの変化は、肌を守るバリア機能が弱まっているために起こります。健康な肌は、バリア機能が正常に働いており、水分をしっかりと保持することができます。そのため、TEWLの値は低く、肌の水分量は高くなります。
反対に、肌荒れを起こしている肌は、バリア機能が低下しているため、水分を保持する力が弱まっています。その結果、TEWLの値が上がり、肌の水分量が減少し、乾燥しやすくなります。そして、乾燥は更なる肌荒れを招き、悪循環に陥ってしまいます。
肌荒れの改善には、この悪循環を断ち切り、肌が本来持つバリア機能を取り戻すことが重要です。具体的には、TEWLの値を下げ、肌の水分量を上げることが必要です。そのためには、保湿成分を豊富に含んだ化粧水や乳液で肌に潤いを与え、肌の乾燥を防ぐことが大切です。また、セラミドなどのバリア機能を補強する成分を含む美容液を使用するのも効果的です。洗顔料やクレンジング料は、肌への負担が少ないものを選び、優しく丁寧に洗うように心がけましょう。ゴシゴシとこすったり、熱いお湯で洗い流したりすると、肌に必要な油分まで奪ってしまい、バリア機能をさらに低下させる可能性があります。
化粧品や手入れの効果を確かめる際にも、TEWLの値は大切な目安となります。肌の状態を数値で客観的に評価できるため、自分に合った化粧品や手入れ方法を見つける上で役立ちます。肌荒れに悩んでいる方は、TEWLの値に着目し、肌の水分バランスを整えることを意識してみましょう。
バリア機能の回復
肌は、まるで城壁のように外部からの様々な刺激から体を守っています。この防御壁の働きを担っているのが肌のバリア機能です。紫外線や乾燥、細菌など、外からの刺激は常に肌を脅かしていますが、バリア機能が正常に働いていれば、これらの刺激から肌を守り、健康な状態を保つことができます。
このバリア機能は、時に外的刺激によって弱まり、その働きが低下してしまうことがあります。例えば、摩擦や乾燥などが原因で肌が荒れてしまうことは、誰しも経験があるのではないでしょうか。しかし、私たちの肌は素晴らしい自己修復機能を備えており、一定の時間が経つと自然とバリア機能を回復させることができます。これをバリア回復と呼びます。
バリア回復の仕組みを調べるために、「テープストリッピング」と呼ばれる特殊な方法が使われます。これは、肌の表面にある角層をテープで剥がし、バリア機能を一時的に低下させる方法です。角層が剥がされると、肌の水分蒸散量を示す「経表皮水分蒸散量(TEWL)」は一時的に増加しますが、その後、徐々に減少し、元の値に戻っていきます。このTEWLの減少速度は、バリア機能の回復速度を表す指標として用いられています。つまり、TEWLが早く減少するほど、バリア機能の回復が速いと言えるのです。
興味深いことに、バリア機能の回復には、心身の状態も影響を与えていることが近年の研究で明らかになってきました。精神的なストレスを感じている状態では、バリア機能の回復が遅れる傾向があります。反対に、特定の香りをかぐことで、バリア回復が促進されるという研究結果も報告されています。心と体の健康が、肌の健康にも密接に関係していると言えるでしょう。毎日のスキンケアに加えて、心身のリラックスも、健康な肌を保つ秘訣と言えるかもしれません。
項目 | 詳細 |
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肌のバリア機能 | 紫外線、乾燥、細菌などの外的刺激から肌を守る働き |
バリア回復 | 外的刺激で弱まったバリア機能が自然と回復する機能 |
テープストリッピング | 肌の角層をテープで剥がし、バリア機能を一時的に低下させる方法 |
経表皮水分蒸散量(TEWL) | 肌の水分蒸散量を示す指標。TEWLの減少速度はバリア機能の回復速度を表す。 |
ストレスの影響 | 精神的ストレスはバリア機能の回復を遅延させる。 |
香りの影響 | 特定の香りはバリア回復を促進する。 |