
けん化価でわかる油脂の秘密
油脂やろうを構成する成分を調べる上で、けん化価は欠かせない数値です。けん化価とは、簡単に言うと、油脂やろう1グラムを石鹸にするために必要な水酸化カリウムの量をミリグラムで表したものです。ここで言う石鹸とは、油脂やろうに含まれる遊離脂肪酸とエステルをアルカリで分解してできたものを指します。
このけん化価を見ることで、油脂やろうの中にどんな脂肪酸がどれくらい含まれているかを知ることができます。例えば、けん化価が高い場合は、その油脂にはたくさんの脂肪酸が含まれているか、もしくは含まれている脂肪酸の分子量が小さいことを示しています。たくさんの脂肪酸が詰まっているイメージ、もしくは小さな粒がたくさん入っているイメージです。逆に、けん化価が低い場合は、脂肪酸の量が少なめか、もしくは含まれている脂肪酸の分子が大きいことを意味します。脂肪酸がまばらにしか入っていないイメージ、もしくは大きな粒が少しだけ入っているイメージです。
もう少し詳しく説明すると、脂肪酸は炭素原子が鎖のように繋がってできた分子です。この鎖の長さが脂肪酸の分子量を左右します。鎖が短い、つまり分子量が小さい脂肪酸ほど、同じ重さの油脂の中にたくさん詰め込むことができます。ですから、けん化価が高くなるのです。逆に、鎖が長い、つまり分子量が大きい脂肪酸は、同じ重さの油脂の中にあまりたくさん詰め込めません。ですから、けん化価は低くなります。
このように、けん化価は油脂やろうの性質を知る上で重要な情報源となります。化粧品や石鹸、ろうそくなど、様々な製品の製造において、原料の油脂やろうの品質を管理するためにけん化価は役立っています。製品の使い心地や機能に影響を与える脂肪酸の組成を理解する上で、けん化価はなくてはならない指標なのです。