
黒色の秘密:化粧品に使われるカーボンブラック
「炭のような黒」を意味するカーボンブラックは、その名のとおり炭素から生まれる黒色の粉です。ガスや液体の炭化水素を燃やす、あるいは熱で分解することで作り出されます。炎の中で、まるで職人が技をふるうように、炭化水素は姿を変え、微細な炭素の粒へと生まれ変わります。この小さな粒こそが、カーボンブラックの正体です。
カーボンブラックの黒さは、光をほとんど反射しない性質によるものです。生まれたばかりの炭素の微粒子は、光を吸い込み、そのほとんどを閉じ込めてしまいます。そのため、私たちの目には黒く映るのです。
炭化水素の種類や燃焼の仕方によって、カーボンブラックの黒にも個性が出ます。原料となる炭化水素の種類が異なれば、生まれる炭素粒子の大きさや性質も変わってきます。また、燃やす温度や時間、空気の量など、燃焼方法によっても、粒子の状態は変化します。まるで、炎の温度や空気を調整することで、様々な黒を描き出す画家のようです。
粒子の大きさや性質の違いは、色の濃さや質感の微妙な変化に繋がります。例えば、粒子が小さければ、より深い黒となり、粒子が大きければ、少し淡く、落ち着いた黒になります。また、粒子の形が均一であれば滑らかな質感、不均一であればマットな質感になります。このようにして生まれた様々な黒は、化粧品に深みのある色や繊細な質感を添えています。口紅の鮮やかな赤を引き立てる黒、アイラインの流れるような黒、マスカラの奥行きのある黒。カーボンブラックは、化粧品に欠かせない色の源なのです。