
化粧品と濡れの関係
物を水に濡らすとは、一体どういうことでしょうか。普段、物の表面は空気で覆われています。空気は物の表面にぴったりとくっついており、物の表面と空気の間に境目ができています。ここに水を垂らすと、水は物の表面にくっつこうとします。この時、水はもともとあった物と空気の境目を押し広げ、水の居場所を作っていきます。水と物の間に新しい境目ができ、物と空気の境目が減っていく、これが濡れるということなのです。
濡れる過程では、必ずエネルギーの変化が伴います。境界面の張力は、面積あたりのエネルギーと考えることができます。つまり、濡れることで境界面の面積が変わると、エネルギーも変化するのです。例えば、空気、水、そして物が接している場面を考えてみましょう。水滴は物の上で、ある角度で安定した状態になります。この角度を接触角といいます。この接触角は、物の表面張力、水の表面張力、そして水と物の境界面の張力、この三つの力の釣り合いで決まります。
ここで、水に洗剤のような、界面活性剤を溶かしてみましょう。界面活性剤は水と空気の境目、そして物と水の境目に集まり、境目の張力を弱める働きがあります。するとどうなるでしょうか。水の表面張力が弱まることで、水滴は物の表面にぐっと引っ張られるようになります。結果として、接触角は小さくなり、水は物にしっかりとなじむ、つまり、より濡れるようになるのです。このように、濡れるという現象は、様々な力の相互作用によって起こる、複雑で興味深い現象なのです。