目

暗い場所に移動した際に、最初は何も見えなくても、しばらくすると徐々に周囲が見えてくる経験は誰しもあるのではないでしょうか。この現象こそが暗順応です。明るい場所から暗い場所へ移動すると、私たちの目は暗闇に順応しようと様々な変化を起こします。 まず、瞳孔の大きさが変化します。明るい場所では、強い光から目を守るために瞳孔は小さくなっています。しかし、暗い場所に移動すると、より多くの光を取り込もうとして瞳孔は大きく開きます。まるでカメラの絞りのように、光を取り込む量を調節しているのです。この瞳孔の変化は暗順応の初期段階で起こる重要な反応です。 しかし、暗順応は瞳孔の変化だけでは説明できません。暗順応の主役は、網膜にある視細胞です。視細胞には、明るい場所で働く錐体細胞と、暗い場所で働く桿体細胞の2種類があります。明るい場所では錐体細胞が活発に働いて、色鮮やかな世界を見せてくれます。一方、暗い場所では桿体細胞が活躍します。桿体細胞は、わずかな光でも感知できるため、暗い場所でものの形や輪郭を認識できるようになるのです。 桿体細胞の中にはロドプシンと呼ばれる感光物質があります。ロドプシンは光に当たると分解され、暗い場所では再び合成されます。明るい場所にいた時はロドプシンは分解された状態ですが、暗い場所に移動すると徐々に再合成されます。このロドプシンの再合成には時間がかかるため、暗闇に目が慣れるまでにはある程度の時間が必要となるのです。 ロドプシンの再合成こそが、暗順応の核心と言えるでしょう。 このように、暗順応は瞳孔の変化と視細胞、特に桿体細胞の働きによって起こる現象です。暗闇に目が慣れるまでには時間がかかりますが、これは私たちの目が、暗い環境でものを見ることができるように適応している証拠なのです。