鉱物

記事数:(2)

着色

化粧品の黒:黒酸化鉄の秘密

黒酸化鉄は、鉄黒と呼ばれる天然の鉱物です。酸化鉄の中でも特に黒色の粉末で、安定した構造を持つ等軸結晶系を形成しています。この結晶構造のおかげで、熱や光、薬品などの外的要因による影響を受けにくく、変質しにくいという特徴を持っています。 この黒色の粉末は、古くから天然に存在する磁鉄鉱を砕いて使われてきました。磁鉄鉱は磁石に引き寄せられる性質、つまり磁性を持つ鉄鉱石の一種です。この天然の磁鉄鉱を細かく砕き、粉末状にすることで、顔料として利用していたのです。しかし、天然であるがゆえに、品質にばらつきがあったり、粒子の大きさを均一にするのが難しかったりといった課題もありました。 その後、技術の進歩により、1940年代から1950年代にかけて、人工的に黒酸化鉄を作り出す方法が確立されました。この人工的に合成された黒酸化鉄は、天然のものと比べて品質が安定しており、粒子の大きさや形を均一に制御することができるという利点があります。また、不純物が少なく、より純度の高い黒酸化鉄を製造することも可能になりました。 こうして品質が向上した合成黒酸化鉄は、現在では様々な分野で活用されています。特に化粧品分野では、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨などのメイクアップ製品に黒色の色素として広く用いられています。これは、黒酸化鉄が肌に優しく、安全性が高いという点に加え、鮮やかな黒色を発色し、化粧崩れしにくいという特性を持つためです。また、塗料やインク、セラミックスなど、工業分野でもその優れた耐久性と安定性を活かして幅広く利用されています。
その他

化粧品におけるセリサイトの役割

絹雲母とも呼ばれるセリサイトは、化粧品によく使われている鉱物の一種です。名前の由来は絹のような美しい光沢で、この光沢は、細かい結晶構造が光を反射することで生まれます。 セリサイトの主な成分は、水を含んだケイ酸アルミニウムカリウムです。同じ仲間の鉱物である雲母と成分は似ていますが、セリサイトの方がより細かい結晶を持っています。この微細な結晶こそが、セリサイトの特徴である滑らかな感触とよく伸びる性質を生み出しているのです。指先に取ると、粉雪のようにサラサラと軽く、肌に伸ばすと、まるで絹のベールをまとったかのような滑らかな感触です。 自然界では、変成岩や火成岩が熱水で変化したり、堆積岩が長い時間をかけて変化したりすることでセリサイトが生まれます。つまり、天然の鉱物として存在しているのです。化粧品に使われるセリサイトは、これらの天然のセリサイトを丁寧に精製し、化粧品に合うように加工したものです。 セリサイトは、ファンデーションやお化粧直しのお粉、アイシャドウ、口紅など、様々な化粧品に使われています。その細かい粒子は、肌の表面を滑らかに整え、光を反射することで肌の透明感を高める効果があります。また、余分な皮脂を吸着してくれるので、化粧崩れを防ぐのにも役立ちます。さらに、紫外線を散乱させる効果も期待できるため、日焼け止め効果のある化粧品にも配合されています。様々な化粧品に配合されるセリサイトは、美しい仕上がりと快適な使い心地を両立させてくれる、優秀な化粧品原料と言えるでしょう。