
制汗剤のすべて
汗のにおいを抑えるための道具、制汗剤。その歴史は意外と浅く、20世紀初頭のアメリカで始まりました。当時、汗を抑えるために使われていたのは塩化アルミニウムという物質です。汗腺を収縮させる働きにより、汗の分泌を抑えることができました。しかし、この初期の制汗剤には大きな欠点がありました。肌に刺激が強く、ひりひりしたり、かぶれたりする人が多かったのです。また、衣服に使うと変色したり、生地が傷んだりすることもありました。そのため、使い続けるのが難しいものでした。
人々がより使いやすい制汗剤を求める中、1947年に画期的な改良が加えられました。部分的に中和された塩化アルミニウム水和物が開発されたのです。この新しい成分は、従来のものに比べて肌への刺激が少なく、使う前に中和する必要もありませんでした。使い勝手が大きく向上したことで、広く普及し、現在でも多くの制汗剤に使われています。
その後、1970年代のアメリカでは、さらに効果の高い塩化アルミニウム-ジルコニウム複合塩が開発されました。汗を抑える効果がより高く、長持ちするという画期的な成分でした。しかし、動物実験でこの成分を吸い込むと肺に影響が出る可能性が示唆され、エアゾールタイプの製品への使用は禁止されることになりました。日本では、安全性を重視し、この成分は使用されていません。現在、様々な種類の制汗剤が販売されていますが、効果や安全性、使い心地など、それぞれの製品の特徴を理解し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。