
白粉:美の秘密兵器
お白粉の歴史は、現代の私たちが想像する以上に古く、江戸時代まで遡ります。その頃のお白粉は、お米から作られたデンプンや、貝殻を砕いて作った粉、粘土などを原料としていました。これらを混ぜ合わせて作られたお白粉は、肌を白く見せることを一番の目的としていました。白い肌は、身分の高さや美しさの象徴とされていたのです。
しかし、この時代のお白粉には、大きな問題がありました。鉛白粉と呼ばれる、鉛を原料とした白粉が広く使われていたのですが、これが体に大変な害を及ぼすことが分かってきたのです。鉛の毒性は、肌荒れを引き起こすだけでなく、体に蓄積されて深刻な健康被害をもたらしました。そのため、明治時代になると、鉛白粉の使用は禁止されることになりました。
鉛の危険性が明らかになった後、体に害のない原料で作られた無鉛白粉が登場しました。そして、大正時代に入ると、ただ白くするだけでなく、肌の色に近い色合いや、ほんのり赤い色味を帯びた色のついたお白粉が発売されるようになりました。これは、より自然で健康的な肌色を演出するために開発された画期的なものでした。
時代は流れ、現代のお白粉は、滑石や雲母といった鉱物を主成分として作られています。さらに、紫外線から肌を守る効果や、肌のうるおいを保つ効果など、様々な機能が加えられた高機能なお白粉も数多く販売されています。江戸時代の白粉から、現代の多機能なお白粉まで、その歴史は、美への追求と共に進化を続けてきたと言えるでしょう。